人間社会の機微を漢文を用いて表現した珠玉のエッセイ集。
★★★★★
2007-12-16
本書は、著者の大学での「中国文学」講義を基にしているが、ただ有名な漢文を紹介するだけではない。漢文を読むことによって著者はその思索を森羅万象へと向ける。いわく自分とは何か、人の生と死について、死後の世界はあるか、宇宙について、暗黙知について、政治・戦争について……、高みに登って時空の無限を達観し、ちっぽけな自分の存在が悲しくなるのが漢文学の伝統だというユーモアもグッド。
さらに、所々にデザートのように添えられた、金子みすゞのやさしい詩がよい口直しになっている。全体を通してゆっくりと味わいながら読みたい文章だ。それにしても本書に掲載されている漢文の過半が、紀元前の春秋・戦国時代のものであることには驚く。鉄器の普及によって人口が急増し、宗教中心の都市国家から政治中心の領域国家へと変化したこの時代こそ、中国史上最も思想家が輩出した時代だということを改めて実感した。




